【白クロ辞典】煩い
今回の言葉は、ごく身近で何気なく発するものかもしれない。
伝える相手、ニュアンス、表情、声の大きさで幅広い変化を伴う。
スマホ。
持ち主の趣味・思考や訴えなどを映し出すといっていい。
表に出すようの表現や、見せるつもりのない深層心理をも映し出す、検索履歴。
それは持ち主の化身。
今度は一緒に、ね
うっせー、黙れ
私は常に主（あるじ）と共にいる。
主は私に絶大な信用を置いており、もはや切り離すことのできない存在。
私も主のことは手に取るように、全てわかると自負している。
ここに記すことは主の【黒い部分＝口の悪さ】を露呈すると同時に、 私を介して主が求めたもの【情報】が露になる。
恥ずかしいことこの上ない。
悩み、もがき。学のない頭の引き出しを漁ることを諦め、私に縋って得たかった表現したかった、想い。
化身であるからこそ、愛を持って語ろう。
ある出来事が起こった。
それは定期的に起こる、主を悩ませる出来事だ。
先日のことを思い出した主は、この感情を発するのに真に正しい言葉はなんだったのだろうと私を手に取った。
ふと湧いた感情、煩い（うるさい）
うるさいを表す漢字は２つあり、
『煩い』
『五月蝿い』
と書くことができる。
五月蝿いの方は蝿（はえ）と入ることから、音にまつわる言葉だが【鬱陶しい・不快さ】のニュアンスが強くなるようだ。
では煩いはどうだろう。
調べてみると煩いは読み方が２つ。
『うるさい』と『わずらい』
わずらい…浮かぶのは『恋煩い』だ。
思い悩むこと。心配すること。悩み。苦労。
なるほど、同じ漢字で全く違う意味であるはずはなく、うるさい状況が続けば思い悩んだりもするのであろう。
その出来事も定期的な出来事だからこそ、主は悩んでいた。
きっとこれからもこの悩みは尽きない。いや、大きくなるであろう。
今のうちになにか対策をとった方がいいのだろうか。
なにせ主の旦那殿に関わること。
このままの状況が続いたらどうだ。
楽しかった2人での時間は?
金銭的にも心配だ。こんな出費が続いたら、生活していけるのだろうか?
もしかしたら周囲からも、今の状況を助長するようなことを言われているかもしれない。
なにより主は、旦那殿の体が、未来が心配なのだ。
それなのに、言いたい放題言ってくれる。
煩い煩い煩い…。
今回、面と向かって発したのは
「うっせー、黙れ」
の方である。
口が悪い。
口から出す言葉が常に白い…オブラートに包まれたものや、本心を隠したキレイな言葉ばかりではないのが主。
後先考えず、瞬時に浮かんだ言葉を気兼ねなく発する場合が少なからずある。
その言葉を正面から受ける大半の相手、旦那殿である。
仕事を終え23時頃帰宅する主と馴染みの居酒屋から帰宅する旦那殿は、最寄り駅近くのコンビニで待ち合わせをする。
LINEの時点でわかっていた。
誤字脱字とよくわからないスタンプが増えるのがサインだ。
今日も常連仲間とやいのやいの楽しく飲んできたのだろう。
大酔っ払い。
これは…面倒くさくなりそうだ。
店内で旦那殿を見つけ近寄ると、カゴにはすでにストロング系のサワー500mlの缶。
主を見つけると旦那殿は、次々にコンビニハイカロリー飯を勧めてくる。
冷凍キーマカレー、ドリア、グラタン、レジ前のホットスナック類。
冷凍庫にアイスが常備されているにも関わらず、スイーツコーナーに呼び寄せる。
「あ、買い置きのチキンラーメン、いっちゃう⁉」
いかねーよっ!! 23時だよっ!!
で、
「うっせー」、なのだ。
金曜23時の駅近コンビニにはそこそこ客がいる。
お腹の出た中年オヤジが、コンビニカゴ片手に一生懸命嫁に話しかける図…。
滑稽である。恥ずかしい。
そして主も飾ることのない旦那殿が目の前にいることで、つい自宅にいるときと同じような口調に。
煩い。黙れ。食わねーよ。これ以上デブにさせんな。
むしろ主の発言がどうだ。
まるで子供の会話だ。
他の客の耳に入ったかどうかはともかく、この無礼、さすがに旦那殿も腹を立てるのではないのか。
…いや、楽しいんでいるのだ。
酔っているから饒舌になり、その結果主の機嫌を悪くさせるが、酔っているからこそ主の暴言を許せるのだ。
そしてそれを主もわかってやっている。
楽しく飲めたならよかった。けど一緒に飲みたかった。
機嫌の悪さはそれなのだから。
しかし酒飲み2人。
この生活サイクルを続けていっていいものだろうか。
旦那殿もしっかりしているようで、将来（老後）のことなど計画を立てている様子はない。
そのくせ「あと10年も生きられないと思う」などと言う。
主は主で、自分の外出をやめたくないのでむしろ喜んで旦那殿に外出を促している風でもある。
そんな薄情な主だが、心配はしている。
旦那殿の未来（明日）が心配である。
これは二日酔いのパターンだな。
ちなみに。
煩い（うるさい）は、音がやかましいや、鬱陶しい煩わしいと違う、他の意味を持つことがある。
嫌になるほど優れている。
嫌になるほどこまごまといきとどいている。
【食材の味に関して煩い】
などの使い方であろう。
2人がこちらの意味で『煩い』を使うことは、一生ないであろう。
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